β-Defensin-3 (Human)  

広域抗菌スペクトルを示す新たな Defensin

ヒトには病原微生物の侵入・定着を防ぐ目的で、抗菌作用を持つペプチドが存在します。Defensin はその中の一つで、好中球に存在するα型と上皮細胞に存在するβ型が知られています。両者は分子内にある3組の S-S 結合架橋様式の違いにより分類されます[Trends Immunol., 23, 291 (2002)]。当社ではα型のα-defensin-1 (HNP-1; code 4271-s)、β型のβ-defensin-1 (hBD-1; code 4337-s), β-defensin-2 (hBD-2; code 4338-s) などをすでに販売しています。

β-Defensin-3 (Human):

    Gly-Ile-Ile-Asn-Thr-Leu-Gln-Lys-Tyr-Tyr-Cys-Arg-Val-Arg-Gly-Gly-Arg-Cys-Ala-Val-
    Leu-Ser-Cys-Leu-Pro-Lys-Glu-Glu-Gln-Ile-Gly-Lys-Cys-Ser-Thr-Arg-Gly-Arg-Lys-Cys-
    Cys-Arg-Arg-Lys-Lys

    (Disulfide bonds between Cys11-Cys40, Cys18-Cys33, and Cys23-Cys41)

2001年に β-defensin-3 (hBD-3) が初めて報告されました[J. Biol. Chem., 276, 5707 (2001)]。ヒトの乾癬の鱗片抽出物と、初代培養されたケラチン生成細胞の cDNA 解析から、hBD-3 は 45 アミノ酸残基からなるペプチドであることがわかりました。また hBD-3 の5つの興味深い特徴が明らかにされました; 1) 溶血作用を示さない、2)広域抗菌スペクトラムを持ち、グラム陽性の黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) やグラム陰性の緑濃菌 (Pseudomonas aeruginosa) 、さらには vancomycin-抵抗性の Enterococcus faecium にも有効性を示す、3) 高塩濃度の食塩(200 mM)存在下でも抗菌活性は低下しない、4) 黄色ブドウ球菌の細胞壁に穴を空けて抗菌効果を示す、5) 初代培養ケラチン生成細胞では tumor necrosis factor-α で発現が誘導される。同年、別の研究グループはN末端5残基を欠損した hBD-3 (6-45) を用い、hBD-3 がイオンチャネルを形成することにより単球の遊走活性を増すこと、interferon-γ により hBD-3 の発現が誘導されることを報告しています [Cell Tissue Res., 306, 257 (2001)]。hBD-3 のmRNAは皮膚、扁桃、気管、胎盤、睾丸、胸腺、心臓で発現していることが確認されています[上記2つの報告、および Gene, 263, 211 (2001)]。さらに、口腔の組織にも発現が確認されています[Eur. J. Oral Sci., 109, 121 (2002)]。また、NMR による溶液中での構造解析から、hBD-3 は hBD-1 や hBD-2 とは異なり、2量体構造を持つことにより黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用を示しているのではないかと考えられています[J. Biol. Chem., 277, 8279 (2002)]。

このように、hBD-3 は他の defensin とは異なる特徴があり、ヒト生体防御における役割の解明に向けて、今後の研究の進展に貢献することが期待されています。

コード 製品名 包装・容量
4382-s β-Defensin-3 (Human) 0.1 mg vial

関連製品

コード 製品名 包装・容量
4271-s α-Defensin-1 (Human) 0.1 mg vial
4337-s β-Defensin-1 (Human) 0.1 mg vial
4338-s β-Defensin-2 (Human) 0.1 mg vial


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