NERP-1 & NERP-2  

ペプチドーム解析を活用して発見された初めての生理活性ペプチド!

ペプチドーム解析という新しい手法が開発された。これは、組織や細胞が産生する生体内ペプチド総体を一斉解析することで得られたペプチド情報を基盤とし、新たな生理活性ペプチドを見出す方法論である。最近、質量分析の技術革新、ヒトゲノム情報の進歩により、試料に含まれるペプチドの一次構造を包括的かつ多量に決定することが可能になっている [http://www.peptidome.jp] 。このペプチドーム解析法を用い、国立循環器病センター研究所、宮崎大学医学部、大阪大学蛋白質研究所、昭和大学医学部の共同研究によりヒト甲状腺髄様癌由来細胞から分泌される新規ペプチド Neuroendocrine regulatory peptide-1 (NERP-1) と NERP-2 が発見された [J. Biol. Chem., 282, 26354 (2007)] 。これは分泌ペプチドに焦点を合わせ、しかも翻訳後修飾が『C端アミド化』に着目した手法である。彼らはアミド化酵素活性の高い細胞から分泌されるペプチドにC端アミド化抗体を作用させ、得られた免疫沈降物の質量分析により解析するという新しいアプローチを採用して解析した。

 NERP-1 (Human): RPESALLGGSEAGERLLQQGLAQVEA-NH2

 NERP-1 (Rat): LEGSFLGGSEAGERLLQQGLAQVEA-NH2

 NERP-2 (Human): <EAEATRQAAAQEERLADLASDLLLQYLLQGGARQRGLG-NH2

 NERP-2 (Rat): <EAEATRQAAAQEERLADLASDLLLQYLLQGGARQRDLG-NH2

実際には、彼らはC端がアミド化されている calcitonin や CGRP を分泌するヒト培養細胞株を用い、培養上清からゲルろ過でペプチド分画を単離した。次いで、逆相クロマトグラフィーで分画した画分の質量分析の結果から、含有するペプチドを一斉解析してC端アミド化ペプチド19個を同定した。この内14個は CGRP および、そのN端残基が欠落している複数のペプチドに相当し、1個は calcitonin であった。残り4個は新規ペプチドで、アミノ酸26残基からなるNERP-1、38残基からなる NERP-2 および、それぞれのN端残基欠落ペプチドであった。この新規ペプチドは神経系や内分泌系細胞で発現する分泌蛋白質 VGF に由来するペプチドであった。ラット VGF 蛋白質にも相同性の高い配列があり、ラット脳抽出物からrat NERP-1、NERP-2 も同定された。

彼らは NERP に対する特異抗体を作製し、ラット脳の免疫染色をおこない、室傍核や視索上核などの視床下部神経核に免疫染色陽性ニューロンを認めた。また、免疫電顕により、NERP は室傍核や視索上核の vasopressin 細胞の同一顆粒内に存在することを確認した。しかも NaCl あるいは angiotensin II をラット脳室内に投与して vasopressin 分泌を亢進させた場合、NERP-1 および NERP-2 がその分泌亢進を用量依存的に抑制することも明らかにされた。これらの作用発現には C端アミドが必須であった。

このように NERP は vasopressin を介する体液・循環調節の新たな制御システムの解明や病態の解析に有用なペプチドとして期待が集まっている。また、NERPはどのような受容体を介して作用を発現するのか? vasopressin 以外の作用に影響しないのか? さらに、中枢神経系以外で NERP は作用しないのか? などが今後どのように解明されていくのか興味深い。

コード 製品名 包装・容量
4441-s Neuroendocrine Regulatory Peptide-1 (Human) 0.1 mg vial
4442-s Neuroendocrine Regulatory Peptide-1 (Rat) 0.1 mg vial
4443-s Neuroendocrine Regulatory Peptide-2 (Human) 0.1 mg vial
4444-s Neuroendocrine Regulatory Peptide-2 (Rat) 0.1 mg vial

関連製品

コード 製品名 包装・容量
4001-v Angiotensin II (Human) 0.5 mg vial
4085-v [Arg8]-Vasopressin 0.5 mg vial


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