植物ペプチドホルモン / CLEペプチド 2019/06/12
CLE25 Peptide・TDIF [CLE41/44 Peptide] は、CLEペプチドファミリーに属するペプチドです。CLEペプチドは植物体内において細胞間の情報伝達を行う植物ペプチドホルモンとして機能します。この度、ペプチド研究所では、世界に先駆けてCLE25 Peptide・TDIF [CLE41/44 Peptide] の販売を開始致します。CLE25 Peptide・TDIF [CLE41/44 Peptide] はヒドロキシプロリンを含む、直鎖状の12残基のペプチドです。
CLEペプチドをコードするCLE (CLAVATA3/EMBRYO-SURROUNDING REGION RELATED) 遺伝子は植物中に高度に保存されており、様々な種類の植物がCLE遺伝子を有しています。シロイヌナズナでは30種類以上、イネでは40種類以上のCLE遺伝子が存在することは知られています。そのような遺伝子群に由来する種々のCLEペプチドそれぞれの機能は完全には明らかになっていませんが、近年、乾燥ストレス等への応答や細胞増殖・分化制御への関与が報告されています。
CLE25 Peptideの機能
CLE25 Peptideは乾燥ストレス耐性を高めるシグナル伝達物質として報告されました1)。植物が乾燥ストレスを感じると、アブシシン酸による気孔の閉鎖によって,蒸散が抑制されて植物体内から水分が失われるのを防ぐことは古くから知られています。しかし、どのようなメカニズムで根から葉へと乾燥ストレスが伝えられて、アブシシン酸合成が促進されるのかは明らかになっていませんでした。理化学研究所の高橋らは、CLE25 Peptideが乾燥ストレスに応答して、根から道管へと放出され、葉まで移動してアブシシン酸の合成を促進することを見出しました。この結果は、CLE25 Peptideが根から葉へと長距離移動して、乾燥ストレスに対処するペプチドホルモンであるという驚くべき発見です。今後、CLE25 Peptideを用いることで、より詳細なメカニズムの解明やペプチド性肥料の開発などが期待されます。
図1. CLE25 Peptideによる乾燥ストレス応答
TDIF [CLE41/44 Peptide]
TDIFは,維管束形成における維管束幹細胞の増殖・分化を調整するシグナル伝達物質として報告されました2)。維管束幹細胞である前形成層細胞は、木部細胞と師部細胞の間に位置しており、増殖し続けながら未分化な幹細胞の維持を行いつつ、木部細胞あるいは師部細胞に分化することで、維管束を成長させます。前形成層細胞は、未分化な細胞を残しつつ、木部細胞と師部細胞のどちらか一方のみに偏って分化しないように調節されていると考えられてきました。師部細胞から放出されたTDIFは、前形成層細胞にあるTDRに結合し、木部細胞への分化を抑制するとともに、前形成層細胞そのものの細胞増殖を促進することが明らかになりました。今後,TDIFを用いることで、さらなる詳細なメカニズムの解明などが期待されます。
図2. TDIF による前形成層細胞の増殖・分化制御
Code | 品名 | 容量 |
4511-v | CLE25 Peptide | 0.5 mg |
4512-v | TDIF [CLE41/44 Peptide] | 0.5 mg |
ペプチド研究所では、CLE Peptideの他にも、Phytosulfokineなどの植物関連化合物の販売を行っております。また、アラビノースなどの糖鎖修飾や各種誘導体化などの合成サービスも行っております。お気軽にお問合せ下さい。
- F. Takahashi, T. Suzuki, Y. Osakabe, S. Betsuyaku, Y. Kondo, N. Dohmae, H. Fukuda, K. Yamaguchi-Shinozaki, and K. Shinozaki, Nature (London), 556, 235 (2018).
- Y. Ito, I. Nakanomyo, H. Motose, K. Iwamoto, S. Sawa, N. Dohmae, and H. Fukuda, Science, 313, 842 (2006).