Metastin (45-54)
ガン転移を抑制するオーファン受容体のペプチド性リガンド
最近の新規生理活性ペプチドは、オーファン受容体を発現させた細胞を使用して発見されることが多い。この手法を用いて Prolactin-Releasing Peptide, Apelin, RFamide Related Peptides 等を次々に同定してきた武田薬品工業から、またしても KiSS-1 遺伝子産物の部分構造に相当する Metastin が報告された[Nature, 411, 613 (2001)]。
KiSS-1 遺伝子はヒトの悪性黒色細胞腫細胞やヒト乳ガン細胞の転移を抑制することがわかっている。しかしこの遺伝子がどの様な蛋白質を産生するのか、またその抑制作用のメカニズム等は不明であった。
新しいGタンパク共役型受容体を探していた武田薬品工業は GPR54 に似た一次構造を持つ hOT7T175 を見つけた。この受容体は Galanin 受容体と類似性があるものの Galanin や既知のペプチドには反応せず、オーファン受容体であった。この受容体がヒトの胎盤の抽出物と反応する事を手掛かりに、彼らは54アミノ酸残基からなるペ プチドを胎盤から単離した。このペプチドは KiSS-1 遺伝子から推定される蛋白質、 KiSS-1 (68-121) amide、に相当し、in vitro では hOT7T175 を発現させた CHO 細胞の走化性と浸潤を阻害し、in vivo では hOT7T175 を発現させた B16-BL6 悪性黒色細胞腫の肺への転移性を弱めたことから Metastin と命名された。さらに細胞内 Ca2+ 増加作用と受容体結合能を指標とした構造活性相関の結果から C 端アミドを含むフラグメントが活性発現に重要であることがわかった。特に Metastin (45-54) は Metastin より10倍強い活性を示した。このフラグメントの受容体結合の Ki 値は pM オーダーであった。この Metastin (45-54) は KiSS-1(112-121) [J. Biol. Chem., 276, 28969 (2001)]、あるいは Kisspeptin-10 [J. Biol. Chem., in press (Online July 16; epub M104847200)] とも呼ばれている。
Metastinにはガン転移抑制作用があることが確認されている。Metastin より強い活性を持つ Metastin (45-54) を用いて、新しい治療法の可能性の検討、また KiSS-1 遺伝子の転移抑制メカニズムの解析など、今後の展開が注目されている。
コード | 製品名 | 包装・容量 |
4389-v | Metastin (Human, 45-54) | 0.5 mg vial |