リン酸化ユビキチン: [Ser(PO3H2)65]-Ubiquitin 2015/12/16
パーキンソン病関連研究に待望の化学合成リン酸化蛋白質
リン酸化ユビキチンは、遺伝性パーキンソン病関連蛋白質 PINK1とParkin の働きを結び付ける分子として、東京都医学総合研究所・蛋白質リサイクルプロジェクト 小谷野 史香 博士、松田 憲之 プロジェクトリーダーらにより、世界で初めて報告されました1)。
遺伝性劣性パーキンソン病の原因遺伝子産物として、PINK1 と Parkin は古くから知られていました。しかしながら、ユビキチンリガーゼ であるParkin は、不良ミトコンドリアの処理 (マイトファジー) に重要な役割を担い、パーキンソン病の発症を抑える因子と考えられてきましたが、その詳しい分子メカニズム、とくにPINK1とParkinとを結びつける実体は不明でした。
小谷野 史香 博士、松田 憲之 プロジェクトリーダーらは、細胞においてミトコンドリアの品質が低下するとPINK1がユビキチンをリン酸化し,それにより生じるリン酸化ユビキチンがParkinを活性化して,遺伝性パーキンソン病の発症を抑制していることを明らかにしました1)。この結果は、PINK1がParkinのUblドメインだけでなく、ユビキチン分子双方の65番目のセリン (Ser) 残基 をリン酸化することで、Parkinを活性化するという非常に興味深い現象です。
今回、当社はSer65がリン酸化されたユビキチン [Ser(PO3H2)65]-Ubiquitin の化学合成に成功し、合成品がParkin活性化作用を示すことを確認しました。今後、[Ser(PO3H2)65]-Ubiquitin を用いたパーキンソン病へのリン酸化ユビキチンの影響の解析が進むことが期待されます。
Code | 品名 | 容量 |
4486-v | [Ser(PO3H2)65]-Ubiquitin | 50 μg vial |
3207-v | Ubiquitin Aldehyde | 50 μg vial |
- F. Koyano, K. Okatsu, H. Kosako, Y. Tamura, E. Go, M. Kimura, Y. Kimura, H. Tsuchiya, H.Yoshihara, T. Hirokawa, T. Endo, E.A. Fon, J.-F. Trempe, Y. Saeki, K.Tanaka, and N. Matsuda, Nature, 510, 162 (2014).
- 東京都医学総合研究所 Webサイト より引用