Orexin (オレキシン) – 新たなる食欲調節ペプチド発見!
[Orphan receptorから脳内ホルモン見つかる]
遺伝子技術の進歩により、多くのG蛋白結合型受容体が見つかっています。その内、ほとんどの受容体については内因性のリガンドが判っていますが、 中には[受容体は判明しているがリガンドが不明]というものもあります。このような受容体は[orphan receptor]と呼ばれています。 Endothelinの発見者としても知られる柳沢教授 (Univ. Texas Southwestern Medical Center at Dallas) と SmithKline Beecham のグループは、このような orphan receptor の1つを発現させた細胞を用いて、ラット脳から得た抽出成分の中から活性を示す分画を精製し、2種類の新しいペプチドを発見しました。この内、33アミノ 酸残基からなり、2つの分子内S-S結合を持つものを orexin-A、28アミノ酸残基からなる直鎖状ペプチドを orexin-B と命名しました[Cell, 92, 573 (1998)]。
この名前はギリシャ語で[食欲]を意味する[orexis]にちなむものです。彼らはさらにラットおよびヒトの orexin-A/B を含む prepro-orexin mRNA の構造を決めるとともに、この mRNA が脳に多く発現していることを見つけました。
また、orexin-A/B の受容体である OX1 OX2 受容体も脳に多く発現していました。さらに in situ hybridization 法と免疫組織化学法により orexin の局在部位が、脳の視床下部、しかも食欲調節に携わる神経が集中している場所である事をつきとめました。彼らは合成 orexin-A/B をラットの側脳室に microinjection すると摂食量が数時間にわたり増加することを確認しました。また、空腹時のラット脳内の orexin mRNA 量が増加していました。このように orexin が脳内ホルモンである可能性は高いと言えます。また、orexin の働きを調節することができれば、肥満や糖尿病患者の食欲を抑制することも可能と考えられ、今後の研究の展開に期待が集まっています。
同じ頃、別のグループから prepro-orexin mRNA と同じ構造を持つ mRNA の研究解析の結果が報告されました[Proc.Natl.Acad.Sci., 95, 322 (1998)]。彼らは38種類のラット mRNA の内の一つが、視床下部で実際に発現されていることを確認しました。さらに in situ hybridization 法を用い、この mRNA が orexin と同部位に局在していることが判りました。また、mRNA からプロセシングされると推定される2種類のペプチド hypocretin 1/2 のうち、合成した hypocretin 2 (orexin-B と同一構造) がラット視床下部培養細胞を刺激することを発見しました。
コード | 製品名 | 包装・容量 |
4346-s | Orexin-A (Human, Rat) | 0.1 mg vial |
4348-s | Orexin-B (Human) | 0.1 mg vial |
4347-s | Orexin-B (Rat, Mouse) | 0.1 mg vial |